約束のエンゲージリング
「マサ兄っ、、!孝兄の家まで目と鼻の先だし、ここまでで大丈夫だよ?」
『いや、何かあったら困るから送らせて。』
「でも、、、。」
私の掛けた言葉は軽く流されてズンズンと足を進める彼だったが、直ぐに孝兄の家に到着した。
何も言わずに去るのはあまりにも感じが悪すぎるかなと思い、立ち止まって彼に声を掛けた。
「送ってくれてありがとう。じゃあまた明日ね。」
素早くその場から立ち去ろうと背を向けると急に掴まれた手。
何事かと驚いていると彼はガバッと頭を下げた。
『本当に情けない男でごめん。俺が千佳に辛い思いさせたのに気を遣わせるばかりで、、仕事にまで迷惑かけてごめん。本当に今日で最後にするからっ、、、!だからちゃんと謝らせて。』
「もう〜〜本当だよ。私が意識するならまだしもマサ兄がそんなんじゃ、責めるにも責められないんだもん。明日からはちゃんと普通にしてよねっ!じゃないと許さないから。」
『あぁ、約束する。千佳、、傷つけてごめん。でも、、ありがとう。』
まっすぐに私の目を見つめて言葉を掛けてから、もう一度ゆっくり深々と頭を下げた。
どのくらいそうしてたのか分からないくらい長い長い謝罪に胸を痛めたが、これで彼の中でケジメがつくのなら仕方ないとその真摯な思いを受け止めた。