ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
彼の手を振り払い、足早に歩いていく。が、歩幅の差ですぐに追いつかれてしまう。
「本当の名前、なんていうの?」
「黙れ覗き魔」
「ミカエルだよ」
なんでもいいけどついてこないで!
足を速めたせいで、しまいには駆けているようになっていた。階段を駆け下りていくと、踊り場の窓から花火が見える。夜空に浮かぶ水色の花。私が一番好きな色だ。つい足を止め、花火に見とれてしまう。そんな私の腕を、ミカエルが引いた。
「っ……!」
もがこうとした手を掴まれ、まるで恋人にするかのように指先を握り込まれる。彼は、人差し指で私の唇をなでてささやいた。
「今の顔、女の子みたいだったよ」
カッとなった私は、ミカエルを突き飛ばした。
「なんだおまえは! 私はキーン家の次男だぞ。こんな無礼な……」
「怒ってるの? 褒めたんだけど」
どこが褒めてるのよ。
彼を睨(にら)みつけていたら、少女が階段を上がってきた。彼女は私を見て、不思議そうに問いかけてくる。
「ロダン様、どうなさったの?」
「あ、ああ、なんでもないよ、アナ」
私は彼女の肩を抱き、階段を下りていく。背後からミカエルの声が追いかけてきた。
「またね、ロダン」
またなどあるものか。私は唇をぬぐい、ぎゅっと眉を寄せた。
「本当の名前、なんていうの?」
「黙れ覗き魔」
「ミカエルだよ」
なんでもいいけどついてこないで!
足を速めたせいで、しまいには駆けているようになっていた。階段を駆け下りていくと、踊り場の窓から花火が見える。夜空に浮かぶ水色の花。私が一番好きな色だ。つい足を止め、花火に見とれてしまう。そんな私の腕を、ミカエルが引いた。
「っ……!」
もがこうとした手を掴まれ、まるで恋人にするかのように指先を握り込まれる。彼は、人差し指で私の唇をなでてささやいた。
「今の顔、女の子みたいだったよ」
カッとなった私は、ミカエルを突き飛ばした。
「なんだおまえは! 私はキーン家の次男だぞ。こんな無礼な……」
「怒ってるの? 褒めたんだけど」
どこが褒めてるのよ。
彼を睨(にら)みつけていたら、少女が階段を上がってきた。彼女は私を見て、不思議そうに問いかけてくる。
「ロダン様、どうなさったの?」
「あ、ああ、なんでもないよ、アナ」
私は彼女の肩を抱き、階段を下りていく。背後からミカエルの声が追いかけてきた。
「またね、ロダン」
またなどあるものか。私は唇をぬぐい、ぎゅっと眉を寄せた。