ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
 私は特別な教育を受けたわけではなく、八つの頃から独自に薬草研究を重ねてきた。研究成果は、古びたノートに書き記されている。
 あんな目にあっても、やはり私は研究を捨てられなかった。それに、研究をしたのは母のことがあったからだ。この世界での私の母、マリア・キーン。
 私は調合した薬を盆にのせ、母の部屋に向かった。扉をノックし、呼びかける。
「母様、お薬です」
 入るように言われて扉を開けると、母がベッドからこちらを見ていた。とてもふたりの子供がいるようには見えない。風で倒れてしまいそうな、儚(はかな)げな美人だ。彼女は私を見て微笑む。
「ありがとう、リナ」
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