ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
「どういうことですか!」
私の剣幕に、原口が耳を塞いだ。ここは、准教授である原口の研究室だ。彼は眉を上げてこちらを見る。
「うるさいなあ……そんな大声出さなくても聞こえるよ」
「あれは私の論文です! なぜ先生が発表してるんですか」
「いいじゃない。誰が発表しても同じだよ」
唇を噛み、強くこぶしを握りしめた。同じではない。これは私が講師になれるかどうかの瀬戸際なのだ。論文を書かない人間は、大学内では地位を得られない。
「教授に報告します」
「すれば? 信じないよ」
「私には日付の古い論文草稿があります!」
原口はかすかに笑い、論文を差し出した。
論文の末尾には、原口と教授の名前が記載されている。こんなことがあっていいのか。
目の前が真っ暗になるのを感じる。
「わかるだろ。これは僕と教授の共同論文なんだ。教授と僕は運命共同体。君がなにを言おうと無駄だよ」
絶句していると、ノックの音が聞こえた。扉を開き、教授の黒崎が顔を出す。
「原口くん、祝杯といかないか」
黒崎はこちらに目も向けず、原口に近寄っていき、肩を叩く。
「いやあ、しかし素晴らしい論文だったよ」
「ありがとうございます」
原口は悪びれなく言って立ち上がった。すれ違いざま、私にささやく。
「まあ、女の子なんだからさ。研究なんて先の見えないものより婚活でもしなよ。ああ、色気がないから無理か。なんなら紹介してあげるし。君まだ二十五だろ? せめて若さがあるうちに早く嫁いだほうがいいよ」
原口がせせら笑う。
その瞬間、私は原口に掴みかかっていた。
私の剣幕に、原口が耳を塞いだ。ここは、准教授である原口の研究室だ。彼は眉を上げてこちらを見る。
「うるさいなあ……そんな大声出さなくても聞こえるよ」
「あれは私の論文です! なぜ先生が発表してるんですか」
「いいじゃない。誰が発表しても同じだよ」
唇を噛み、強くこぶしを握りしめた。同じではない。これは私が講師になれるかどうかの瀬戸際なのだ。論文を書かない人間は、大学内では地位を得られない。
「教授に報告します」
「すれば? 信じないよ」
「私には日付の古い論文草稿があります!」
原口はかすかに笑い、論文を差し出した。
論文の末尾には、原口と教授の名前が記載されている。こんなことがあっていいのか。
目の前が真っ暗になるのを感じる。
「わかるだろ。これは僕と教授の共同論文なんだ。教授と僕は運命共同体。君がなにを言おうと無駄だよ」
絶句していると、ノックの音が聞こえた。扉を開き、教授の黒崎が顔を出す。
「原口くん、祝杯といかないか」
黒崎はこちらに目も向けず、原口に近寄っていき、肩を叩く。
「いやあ、しかし素晴らしい論文だったよ」
「ありがとうございます」
原口は悪びれなく言って立ち上がった。すれ違いざま、私にささやく。
「まあ、女の子なんだからさ。研究なんて先の見えないものより婚活でもしなよ。ああ、色気がないから無理か。なんなら紹介してあげるし。君まだ二十五だろ? せめて若さがあるうちに早く嫁いだほうがいいよ」
原口がせせら笑う。
その瞬間、私は原口に掴みかかっていた。