ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました

第一章

出会いの夜

【第一章　出会いの夜】

　キラキラと輝くシャンデリアの明かり。その下でくるくる回る着飾った男女。異次元だ。いや、ここは異世界だ。
「ロダン様、私と踊っていただけますか……？」
　かわいらしい女の子が頬を染め、声をかけてくる。私こと、ロダン・キーンは笑みを浮かべた。
「もちろんです、レディ」
　彼女の手を取ってダンスフロアに進み出る。少女に「お名前は？」と尋ねると、「アナです」と答えた。
　さして身長の変わらない少女をリードし、男性用のステップを刻んだ。常に微笑みを浮かべるのも忘れない。
　車にひかれ命を落とした私は、転生してキーン家の伯爵令嬢に生まれ変わった。
　自分が転生者だと気がついたのは八歳のとき。最初は信じられなかった。
　かつて日本に生まれ、二十五年間生きてきた記憶が頭の中に流れ込んできたのだ。