ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
 私は薬学科の院生で、論文を奪われた夜、事故にあい死んだ。冴えない人生。惨めな最期。女でいてもろくな目にあわなかったという記憶が。
 それ以来ずっと男で通している。本名はリナ・キーン。奇しくも転生前と同じ名前だ。男性名を名乗るようになったのは、その名前が嫌いだったということもある。
 それに、この世界の淑女は大変なのだ。
 十二歳で社交界に出て、なるべく地位の高い男を選ぶ。しかもタダでは結婚できない。花嫁は持参金というものを出さなければならないのである。
 もしも伯爵令嬢として振る舞っていたなら、山ほど縁談がきていただろう。キーン家は伯爵家で、さして家格が高いわけではない。しかしキーン家は代々、王宮薬師という名誉ある職についている。花嫁に取れば箔がつくというものだ。おまけに私は誰もが見とれるほど美しく生まれ変わった。
< 5 / 27 >

この作品をシェア

pagetop