ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
 声がしたほうに視線をやると、ひとりの青年が立っていた。まばゆいプラチナブロンドの髪。アクアマリンの瞳は、澄み渡った海のようだ。私はいぶかしげに、美しい青年を見る。
「……あなたは?」
「ミカエル。君は?」
「ロダン・キーン」
 私が名乗ると、青年がうなずく。
「なるほど。王宮薬師だね」
「ええ、父が」
「君は?」
「この春から」
 ミカエルは感心した声を出す。
「へえ、そうなんだ。そのわりに処置が早かったね。新人とは思えない」
「母が病弱なんです」
 会話の途中、胸もとが苦しくなるのを感じた。さらしをきつく巻きすぎたかもしれない。
「ちょっと失礼します」
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