Legal office(法律事務所)に恋の罠 *番外編～ジェラシーは内密に～

｢三浦マネージャー、明日のファン氏のパーティーの受け付けの準備はお済みですか？｣

三浦はすでに、フロントのレセプションに戻っており、ゲストの対応に追われていた。

業務の合間をぬって、奏が三浦に話しかけると

｢桜坂CEO、わざわざご足労を頂きありがとうございます。明日はフロントのスタッフを総動員して対応に当たります。臨時の受け付けを準備し、通常の宿泊客とはラインを差別化します。案内板の設置とボーイやポーターの配置、その他必要事項については今朝、お渡しした資料の通りです｣

スラスラと模範解答を示す三浦を奏はじっと見つめた。

｢桜坂CEO？何か問題がございましたか？お気づきの点は何なりとお申し付け下さいませ｣

邪気のない澄んだ瞳は、三浦の人間性の良さを表している。

まるで和奏の初恋の相手、小池のような･･･｡

｢CEO･･･?｣

｢いや、特に問題はない。明日はよろしく頼む｣

奏は三浦の肩をポンと叩くと、苦笑してその場を去ろうとした。

｢CEO！｣

突然、三浦に呼び止められて奏は振り返った。

｢夢谷先生を大事にしてあげてください。無理は良くない｣

奏は真剣な三浦の言葉を聞いて、しばらく立ち止まっていたが、

いつもの作り笑いで軽く頷いて三浦に背中を向ける。

｢･･･君に言われなくてもわかっている｣

小さな声で呟いた奏の悔しそうな声は、周囲の雑音に掻き消されて泡沫に消えた･･･｡