片想い同盟


「え〜」という安達くんの落胆した声と、そんな彼に呆れる拓海の声を背に、私は香里奈の手を引いてその場を離れた。



「ちょ……っ、杏樹」


大丈夫、全然なんてことない。


ただ否定しただけじゃない。否定した拓海が正しい。……落ち込む方が間違ってる。



「杏樹ってば!」


香里奈の大きな声に名前を呼ばれて、ハッとした。


思わず歩いていた足も止まって、後ろを振り向く。


「ごめん。急に引っ張って」


いま思えば私も香里奈も浴衣だ。早歩きしすぎた。


そう謝って手を離すと、今度は逆に香里奈の手が私の手を掴む。


「そうじゃないでしょ」

「え……」


< 233 / 341 >

この作品をシェア

pagetop