片想い同盟


待ち合わせ場所まで向かうと、スマホを手に握りしめながらあたりをキョロキョロしている杏がいた。


もしかして、探してくれてる?


それだけのことで愛おしさが込み上げてきて、駆け寄って思い切り抱き締めたい衝動にかられる。



「なぁ、あの子可愛くね?」

「うわ、マジだ。どうする?声かけちゃう?」


そんな俺の横で、杏をニヤついた顔で見つめる2人の男の声が聞こえた。


考える余地もなく、俺はその男共の前に回り込んでキッと睨みつける。



……ったく、今日目つけられすぎだから。


たしかに、今日のあいつは本気で可愛いと思う。

まさか浴衣を着てくるとは、正直思ってもみなかったし。


……けど、可愛いだなんて思うのは俺だけでいい。

まじで、他の男に見られたくない。


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