片想い同盟
「杏」
そいつらに見せつけるかのように、俺は彼女の名前を呼んだ。
「あ、拓海」
「悪りぃ、遅くなった」
やつらの視界からふさぐように、杏の前に立つ。
チラッと振り返ると、男たちが去って行くのが見えた。
とっとと帰れ、バーカ。
そんなガキっぽいことを心の中で言い放つ。
「拓海?どうかした?」
「んや、なんでもない」
首をかしげる杏に、誤魔化すように頭をポンと撫でた。
いつもと変わらないスキンシップのはずなのに、久しぶりのせいかたまらなく愛しい。