片想い同盟

「杏」

「……っ、あー、ごめん。私あっちの準備しなくちゃ」

「なぁ、ちょっとくらい話聞い……」

「急いでるから、ごめんね」


一瞬のタイミングをついて話しかけたはいいけれど、やっぱり逃げられた。


さらに追いかけようにも、杏は女子たちの中に入っていくし、こっちもこっちで準備があって、まるでうまくいかない。



「…か…わ。おい、唐沢って」

「……え。あー、悪い。ぼけっとしてた」


結局客引きのために教室を出ても、考えてるのはあいつのことばっか。



「おいおい、しっかりしてくれよなー。客足が伸びるかは、お前と遠山さんがいる午前にかかってんだから」

「はは、んだよそれ」


ずいぶんと熱心なクラスメイトに、いまはそれどころじゃない、だなんて言えるわけもない。