片想い同盟


「杏だけが優勢だと思うなよ、バーカ」


まだ赤いくせに、よく言う。

そう思うはずなのに、私の方が何倍も顔が赤くなっている気しかしなかった。



「あれ、唐沢くんと杏樹ちゃんが手繋いでる!」

「うわっ、遂に公の場でもイチャつき始めたのかよ〜」


歩く廊下のあちこちで、私たちを知っている同級生たちがからかってくる。


「そーだよ。わりぃかよ」


そんな彼らに言い返した拓海の言葉に、思わずバッと顔を上げた。


いままでずっと、否定も肯定もせずにかわしてきた私たち。

でも今日からは……というか、いまからは。もう肯定していいんだ。


私、本当に拓海の彼女になれたんだ。

いまさらながらにそのことを実感して、また心があったかくなる。


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