片想い同盟
自分が走って届けた方が早いと思ってるんだ、彼は。まぁ実際私は足が遅いから、正直な話助かっている。
だからそこは素直に甘えることにして、私はカバンを手に取り席を立った。
あーあ。もうこんな時間。
「じゃあまた明日ね」
「おう」
拓海に声をかけてから、もう一度窓の外に目を向ける。
楽しそうにボールを追いかける優希くんが目に入って、思わず笑みがこぼれた。
「杏」
「ん?」
まだ席を立っていない拓海が、私の名前を呼ぶ。
早く行けばいいものを。これなら私が職員室に持って行った方が早いかもしれない。
「なに?」
グラウンドに向けてた視線を教室に移すと、さっきまでとは違い、やけに真剣な顔をした拓海の目が私を見つめていた。
そして、少し悩んだ表情を見せたあと、重いであろうその口を開き私に告げる。
「あいつ、好きな人いるぞ」と。