片想い同盟
「可愛いねぇ、杏ちゃん」
「っだから、それ……!」
「ん?どれ?」
わかっているはずなのに、拓海は楽しいイタズラを見つけた子供のように、私をからかって笑う。
顔がいいからなおさらたちが悪い。
今こうして手を掴まれていても何の感情も湧かないのに、その言葉たった一つでドキドキと心臓が音を立てる。
ムカつく。拓海相手にこんなの。
「覚えてなさいよ」
「恋愛初心者の杏なんか怖くないね」
べっ、と舌を出す拓海を見て、いま誓った。
絶対絶対、私だって拓海の弱点見つけてやるんだから。
「よし!もう一回サーブから!」
「……えっ、はっ、まじ?」
目を丸くする拓海への対抗心で、私は閉館時間たっぷりまで練習したのだった。