片想い同盟
「お疲れ様」
キョロキョロと体育館内を見回すと、不意に後ろからいつもの声が聞こえた。
ばっと振り返ると、そこにいたのは苦笑いした杏。
「せっかくかっこよかったのにね」
「……うっせ」
わざわざ嫌味ったらしい言い方でそう言ってきたということは、見られてた。いまの光景を。
反射的にふいっと素っ気ない態度を取ったけれど、内心はすごくホッとした。……杏の顔を見て、ホッとした。
こいつが半ば強引に作ったこのよくわからない同盟というものに、俺もすでに救われているのは言い逃れもできない事実。
「すっごくかっこよかったよ、拓海」
珍しく、杏はまっすぐ俺を見つめてそう言った。