片想い同盟



「お疲れ様」


キョロキョロと体育館内を見回すと、不意に後ろからいつもの声が聞こえた。


ばっと振り返ると、そこにいたのは苦笑いした杏。



「せっかくかっこよかったのにね」

「……うっせ」


わざわざ嫌味ったらしい言い方でそう言ってきたということは、見られてた。いまの光景を。


反射的にふいっと素っ気ない態度を取ったけれど、内心はすごくホッとした。……杏の顔を見て、ホッとした。


こいつが半ば強引に作ったこのよくわからない同盟というものに、俺もすでに救われているのは言い逃れもできない事実。



「すっごくかっこよかったよ、拓海」


珍しく、杏はまっすぐ俺を見つめてそう言った。



< 91 / 341 >

この作品をシェア

pagetop