片想い同盟


「……ありがとな」

「ん?なにか言った?」


ボソッと呟いた言葉は本人には届かなかったけれど、いまの俺にはこれが限界。

男にだっていろいろある。



それに、届いていたとしてもこいつはきっと「何のこと?」と首をかしげるだろうから。



「足、平気か?」

「あー、うん。しっかり固定してもらったから」

「優希くんに?」

「っ、バカ!」


からかい半分で高野の名前を出すと、わかりやすいくらいに杏はムキになる。


バシッと力強く俺の肩を叩いてくるあたり、足の方も大丈夫だろう。



結局女子バレーの方は、3年と当たって負けたらしい。でも、杏いわく、接戦だったんだとか。


その後、俺たち男子バスケはなんとか決勝まで勝ち進んだものの、やはり3年の壁は大きく2位という形で終わった。


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