結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。


「なんで俺が女に囲まれてるの知ってたのに俺のところに来てくれなかったの?」



少し拗ねてそう言ってくる飯田くんが、不覚にも可愛いなと思ってしまった。


イケナイイケナイ…



「女の人がいっぱいいるところにわたしが行かなくてもいいかなって……」



ね?

わたし飯田くんの彼女とかじゃないし。



「俺待ってたのに……」



ぼそっとそう言った飯田くんの言葉は聞き取れなかった。



「ゆきちゃん、行こうか」



―ぎゅっ



え?

なんで飯田くんと手を繋いでるの?



「あ、あの…。飯田くん、手……」


「嫌?」


「え?」


「俺と手繋ぐの、嫌?」



嫌って聞かれても、なんて答えればいいの?



「今日だけ。今日だけは許して?」



そんなふうに言われたらわたしは何も言えないよ?



「分かりました…」


「ありがとう」



そう言った飯田くんの顔は、とても嬉しそうに微笑んでいた。



今日はめいっぱい楽しもう。


ちゃんとけじめをつけるために……


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