結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。
「夏祭りのあとね、結城くんとの距離がすごく縮んだ気がしたの」
結城くんからのスキンシップが多くなって、だけど不思議とわたしはそれが全然嫌じゃなくて。
結城くんとの穏やかな、そして甘さを含んだ時間が大好きだった。
別に付き合ってたわけじゃない。
だからこそ、結城くんに以前より近づけた気がして嬉しかったんだ。
「だけど、つい最近。
ほんとにここ1週間ぐらいかな。
あんなに多かったスキンシップが急に減って、結城くんは家になかなか帰ってこなくなったの」
「どういうこと?」
「分からない。
ただ、帰ってくるのはいつも決まって明け方なの」
「朝帰りってこと?」
「うん…」
一度、結城くんが帰ってきたときに目が覚めた日があった。
そのとき時計を見たら、針が指していたのは5時。
「夜勤でバイトとか?」
「わたしもそう思ったよ。思ったけど……」
「ゆき?」
急に下を俯いたわたしを見て、あやちゃんは心配そうにわたしの顔を覗き込んだ。