結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。



―直也side



『直也、お母さんちょっとお出かけしてくるわね』大きい鞄を持って玄関に向かう母さん。



『直也は良い子だもんね。

だからちゃんとお留守番できるわよね?』


『…お母さん帰ってくるよね?』



小さかった俺でもなんとなく嫌な予感を感じていた。



だから、そう聞かずにはいられなかったんだ。



『バイバイ、直也』



だけど俺のその質問には答えずに、そう言って家から出ていく母さん。



俺が大好きだった優しい笑顔を残し、

『お母さん!お母さん待って!』



俺が呼ぶ声を無視して……



―バッ!



「はぁ、はぁ、はぁ……」



夢、か。



「はぁー…」



肩の力を抜いてまたポスッと浜辺に寝転がる。



夜中にゆきの家を出て行って、そのまま海に来た。



この海は、昔母さんと父さんと良く来た思い出の場所だから。



そして、目をつぶれば思い浮かぶのはゆきの怯えた顔と涙。



嫌われた、よな……


< 187 / 275 >

この作品をシェア

pagetop