結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。
―直也side
『直也、お母さんちょっとお出かけしてくるわね』大きい鞄を持って玄関に向かう母さん。
『直也は良い子だもんね。
だからちゃんとお留守番できるわよね?』
『…お母さん帰ってくるよね?』
小さかった俺でもなんとなく嫌な予感を感じていた。
だから、そう聞かずにはいられなかったんだ。
『バイバイ、直也』
だけど俺のその質問には答えずに、そう言って家から出ていく母さん。
俺が大好きだった優しい笑顔を残し、
『お母さん!お母さん待って!』
俺が呼ぶ声を無視して……
―バッ!
「はぁ、はぁ、はぁ……」
夢、か。
「はぁー…」
肩の力を抜いてまたポスッと浜辺に寝転がる。
夜中にゆきの家を出て行って、そのまま海に来た。
この海は、昔母さんと父さんと良く来た思い出の場所だから。
そして、目をつぶれば思い浮かぶのはゆきの怯えた顔と涙。
嫌われた、よな……