結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。

「こんな思いするなら、恋なんてしたくなかった……。

結城くんのこと、好きになりたくなかった…」



気づいた時には、そんな言葉を放ってた。

それはまるで、今までのわたしたちの時間を全て否定する言葉で。


慌てて顔を上げると目に入ったのは、結城くんの傷ついた顔。



わたしは言ってはいけないことを言ってしまったんだ。



結城くんを笑顔にすると誓ったわたしが、結城くんから笑顔を消してしまった。


わたしが、傷つけてしまった。



最低だ……。




暫くの沈黙の後、結城くんは

「あっそう」



そう冷たく言って、わたしの顔を見ることなく保健室から出ていった。



結城くんが出て行ったことにより、再び訪れた静寂にわたしは後悔していた。



言ってしまった言葉はもう取り消せない。


後悔してももう遅いのに。



結城くんを傷つけてしまったこと、もうほんとに終わってしまったという事実にどうしても泣きたくなってしまった。



でも、わたしに泣く資格なんて無い。



しかしそんな思いとは裏腹に、我慢すればするほど涙は抑えられなかった。




「ごめんなさい、結城くん……」




涙を一粒零して、わたしは結城くんが去っていったドアの方を向いて呟いた。