結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。
「それに何?
逢坂咲希とキスしたって?ふざけんじゃないわよ」
「…は?なんで、それを……」
と言ったあとすぐに、
まさか……と目を見開かせた。
「そのまさか。
ゆきはそのこと知ってるわよ」
その場面に出くわしちゃったんだから。
それを見てゆきがどんな思いをしたのか、この男は知らないんだ。
「ゆきがまた、恋をすることに臆病になってしまったら…。
あたし、そのときはほんとに結城くんのこと許さないから!」
せっかく、過去の傷がやっと癒えたと思ったのに……
「結城くんなら、ゆきを救ってくれるって信じてたのに……」
恋をすることに臆病になっていたゆきに、もう一度誰かを好きになることがどれだけ素敵なものなのか、教えてくれた結城くんなら大丈夫だって…。
「……どういうこと?」
眉を寄せてそう聞いてくる結城くんに、やっぱり何も知らなかったんだと気づく。
なんとなくそんな気はしてたけど。
ゆきはあまり自分のことは話さないから。
「ゆきの過去に何があったんだ?」
教えてくれと言わんばかりにぐんと近づく結城くん。
そんな結城くんを見て、あたしは忘れもしないあの中三のときの出来事を話し始めた。