結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。


ーガチャッ



「た、ただいまぁ…」



鍵が閉まってたからママもいないのかな?



なぜか抜き足差し足でリビングまで行く。


けどやっぱり家には誰もいなかった。



「なんだぁ…」



ソファにドサッと座るけど、すぐに喉が乾いてキッチンにかけて行く。



大好きなミルクティーでも飲もうかなと思い、お湯を沸かしているところをボーッとただ見つめていたそのとき__



――ギュッ!



ふと誰かに後ろから強く抱きしめられた。



「……ぇ?」



誰?と思い後ろを振り向こうとしたとき、


「………ゆき……」



わたしの名前を呼ぶ、力無いか細い声が聞こえた。



それが結城くんの声だとわたしはすぐに分かった。



「ゆき……」



再び聞こえる結城くんの声。



それと同時に更にわたしを抱きしめる力が強くなる。



わたしはそっと結城くんの腕を離し、結城くんの方に体を向けた。



目に入るのは、悲しそうに眉を下げている結城くんの顔。



その顔に、わたしの胸はズキリと痛んだ。


わたしが、結城くんにこんな顔させてるんだ……。


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