結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。
「わたしなりの男の人との距離の置き方です」
近づきすぎず、でも突き放すことなくちょうどいい距離を保てるのが敬語。
「ふーん」
わたしが無表情でそう言ったからなのか、それ以上はなにも聞いてこなかった。
わたしにとってはありがたいのですが。
「ごちそうさま!うまかった」
そう言ってキッチンに自分が使った食器をもっていく結城くん。
さっきの暗い雰囲気から一気に結城くんが変えてくれた。
「あ、そーだ。
この雨、これからもっと酷くなるってさ」
「そーなんですか。了解です」
わたしは今も尚降り続けている雨に視線を向ける。
夕飯の支度をしている時から降り始めた雨。
雷、鳴らなきゃいいけど……
小さいときから雷は大の苦手だから。
って、
「結城くん!?何をしてるんですか!?」
「何って、食器洗ってるけど」
「わたしがやるので結城くんはゆっくりしててください!」
「いいって。ゆきは風呂でも入ってこいよ」
「でもっ!」
「いいから」
むぅ。
片付けはわたしの仕事なのに。