届け、この想い~先生と私とチューリップ~
私は、少しだけウキウキしながら、数学教科室のドアをノックした。


「はーい」


「藤田です」


「あいよ」


中に入ると、佐伯先生しかいなかった。


ほかの先生は、担任をしているから、ほとんど佐伯先生1人らしい。


「お前なぁ……よそ見はないだろ、よそ見は」


先生は、呆れたように、分厚い問題集で私の頭をポフッと叩いた。




ぜんぜん痛くない。



むしろ、嬉しいかも……。




「……なにか、違う事考えてる?」



……バレた。



「こんな罰じゃだめなら、もっと厳しいのいくか」



机の横にパイプ椅子を出され、私がちょこんと座ると、1枚のプリントを出された。




私への、最大のお仕置。






「……うお」


「女の子らしくない声出すねー。風が綺麗だなんて言う子とは、別人みたいだよ。さ、これをやって」


目の前のプリントには、数字がいっぱい……。


「わ、私、四則演算ばっちりなんで大丈夫です!!生きていけますから……」


顔の前に手を出し笑うと、先生も、にっこりと笑った。


「そうか……。じゃ、やるか」


「えぇっ!?」







先生は、丁寧に教えてくれた。


「で、答えは?」


「……こう?」


「出来たじゃん!」






ゆっくりとした時間……窓から入ってきた春の風が、優しく吹いた。





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