届け、この想い~先生と私とチューリップ~
「あ……先生、その鉛筆欲しい」


机に置いてあった1本の鉛筆。


「は?ただの鉛筆だぞ?」


「いいの。欲しい!!」


私が言うと、先生は困った顔をしたまま笑った。


「いいけど……変なやつ」

と言いながら、削ってある鉛筆の、先の部分を指差した。


「使えないようにサインしてやろうか?」


意地悪に笑う先生……。


その時、少しだけ見えた右の八重歯に、キュンと胸が鳴った。


「やった!!じゃあ、Tって書いて!!」


先生は、もう一度、変なやつ……と言いながら、緑色のペンで『T』と書いた。


やったぁ……。


この鉛筆も、宝物。


もう、削れない、可哀相な鉛筆は私の宝物になった……。


「ほら、帰るよ」


と、先生は私の肩を叩く。




「春でも、さすがに夜は少し冷えるな。大丈夫?寒くない?」


先生は、どこまでも優しいんだね……。


「大丈夫です!私、強い子なんで!」


私が元気よく答えると、先生は声を出して笑った。


先生の、その笑顔が好き……。


黒板に数式を書きながら、振り返る顔が好き……。


PUMAのジャージを着こなす先生が好き……。


白い大きな車に乗る先生が好き……。


私の中は

先生で、いっぱい。



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