届け、この想い~先生と私とチューリップ~
ある日は、学校の外で見かけた。


ある日は、更衣室で歯ブラシを銜えたまま、急いでネクタイを絞めてる姿を見かけた。


私の数学のノートは、先生日記。





先生のジャージの色

スーツの色

ネクタイの色

しぐさ

寝ぐせ

笑顔





いろんなことを、ノートの端っこにメモメモ……。






今日もまた、先生日記のページが増える。



先生との時間を、忘れぬように。




先生との時間を、永遠に保存するように……。





「今日数学あったっけ?」

沙織は眠そうな顔で、教室に貼ってある時間割を見た。



「あるよ、あるある!5時間目」



「……時間割見るより、杏に聞いたほうが早いや」



沙織は呆れたように、やれやれ、と笑った。


そんな沙織に、ピースサインを出し、にんまりと笑顔を向ける。







私は数学が大嫌いだった。



数学なんて四則演算さえできれば生きていけるじゃん。



xがなんちゃら、yがなんちゃらなんて、難しいことやらなくたっていいじゃん。



それが、私だった……。






テストは赤点ギリギリ。



でも、買い物出来るもん。



料理の分量だって、完璧だもん。



でもね、それが……変わったんだ。







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