届け、この想い~先生と私とチューリップ~
先生は、淡々と授業をする岡先生とは違い、一つ一つ、ゆっくり丁寧に進める。


「授業の進め方が遅い」なんて言われても、胸を張って「せっかくの授業、きちんと理解させたい」と言っていた。


すごく優しいんだ。

熱いんだ。


それでも、わからなかったり、ついていけない生徒には休み時間や、放課後に特別に授業をしてくれた。





今まで、ろくに授業を受けなかったクラス一の不良くんが「解けた!!先生マジさんきゅー!」と言った時「おめでとう!君の力で出来たんだよ」なんて、すごくいい笑顔をした。


それが、私の胸をきゅっと締めた。




一番最初に先生と話をしたのは、春の朝だった……。



生活委員だった私と沙織は二人一組になって、昇降口に立ち、遅刻の生徒を名簿でチェックしていた。



そのとき、PUMAのジャージを着た先生が、眠そうに目をこすりながら、片手をポケットに入れ、ふっと笑った。




「佐伯ちゃん、どうしたの?」と、沙織が聞くと、先生は「聞いてくれよ~」と口を尖らせ、天井を見上げた。



「なんか学年主任がさ、生徒だけだと、厳しく取り締まれないだろうからって、出動命令がでたわけよ」



大袈裟にため息を吐きながら、不貞腐れた顔も、こっそり見た。





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