届け、この想い~先生と私とチューリップ~
「はいはい。あっちで鯛焼き買ってやるから、ご機嫌直してくださいな」


ハハハと、カートを押して歩く先生が、とてもかっこよく見えた。



「待ってよー」

と、私は先生のジャージの裾を引っ張った。


咄嗟に掴んだジャージに、胸が高鳴り指先が震えた。


そして、気になったことを聞いてみる。




「なんで、先生はいつもジャージなの?」



「ん?楽だから」



「なんで?」



なんで、なんでと聞く私に、先生は振り返り私の頭をぐしゃっと撫でた。


「うるせーな。お前はエジソンか!スーツよりも、ジャージの方が、楽に決まってんだろ」



「うちの担任は毎日スーツじゃん?」



「……インテリ眼鏡にはスーツだろ?」


私と先生は、担任のジャージ姿を想像し二人同時に笑った。





「さてと、お会計かな……」


しばらく二人でスーパーを周り、沙織と合流して鯛焼きを買ってもらう。


「俺は小倉。お嬢さんたちは?」


小倉に、抹茶に、チョコに、カスタード


「迷う~」


「何と?」


「カスタードとチョコ」


「藤田は?」


「小倉とチョコ」


「あーもう!じゃあ、小倉一つとチョコ二つ、カスタード一つください」


「お会計890円です」



「たっけーな、鯛焼きこの野郎」



小さい声で文句を言う先生は初めて見て、即思い出BOXに追加した。




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