届け、この想い~先生と私とチューリップ~
先生の車に乗り、鯛焼きの入った紙袋を渡された。


「藤田ー、小倉のは、俺と半分こな」


私の心臓は、トクントクンと早鐘を打つ。



沙織はカスタードとチョコ、私はチョコと先生と半分こした小倉。



半分にされた

小倉あんの鯛焼きは

緊張して、なかなか食べられなかった……。



「さ、超特急で帰るぞ」


先生は半分の鯛焼きを銜えたまま、エンジンをかけた。



FMから流れた、ダイアナ・ロスとライオネル・リッチーのラブソングが私の心に染み渡る。




先生の隣に……

その助手席に

女の人は乗るのかな……



黒いシンプルな車内に似合わない、ハートのクッションが助手席に置いてあったのを見た……。



独身男性にしては大きすぎる白い車。

黒いシンプルな車内。

助手席のピンクのハート型のクッション。



先生……



彼女……居るんだ……




私と同じく、ハート型のクッションに気付いた沙織は、何も言わず、そっと、私の手を握った。


私も、きゅっと握り返し『大丈夫だよ』と、そう伝えた。


「じゃ、先に教室戻ってね。鯛焼き君は、みんなには秘密だぞ」


先生の車から降り、沙織と彼女像を話した。



少し悲しい。



ううん、本当は『やっぱり』って思って、すごく悲しい……。



だけど、大丈夫。



別れるかもしれないじゃん……。



彼女じゃないかもしれないじゃん……。



私の中で

今まで知らなかった

黒い気持ちがグルグルとまわる



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