届け、この想い~先生と私とチューリップ~
「ちょっと、アンタ!」


沙織が長沢さんに詰め寄る。



「あ……えっと……」



肝心の私の言葉が、うまく出てこない……。


上手く息が吸えず、心拍数が上がり、苦しくなり首元に触れる。



「本当か?」



先生は、未だ立ち上がらない長沢さんの肩に手を置いたまま、私を見上げた。


その瞳は、感情を読み取ることが出来なかった。



何を思っているのか

何を写しているのか



「杏が、そんなことするわけないじゃん!」


「本人に聞いてるんだから、お前は黙ってろ!!」



初めて聞いた、先生の怒鳴り声に、沙織もグッと言葉を詰まらせた。





「……ごめんなさい……」



私は、やっと言えた一言を呟き、走って校舎に戻った……。





誰も居ない教室に一人……。


私は、悔しくて、悲しくてジャージの袖で、涙をゴシゴシと乱暴に拭いた。



長沢さん、きっと気付いてるんだ。

私の気持ちに……。




同じ気持ちの人は

どうしても、嫌でも

分かっちゃうよね……。


長沢さんが先生を見つめる瞳と、私が先生を見つめる瞳は同じだったんだ……。


だから、きっと

私が邪魔だったのかな……。


私が、先生に嫌われればいいと思ってるのかな……。



先生が、私を嫌な奴だと思うならば私は、私は……。






とめどなく、涙は流れ続ける……。



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