届け、この想い~先生と私とチューリップ~
カチカチと秒針の音と、私の荒い息遣いが耳につく。

その時、パタン、パタンと静かな廊下にスリッパの音が聞こえた。


その音に気付いて間もなく、教室のドアが、乱暴に開けられた。


「やっぱり、ここに居たか……」


先生は、綺麗な髪を乱し、息を切らせて、少し険しい表情をしていた。



今まで、見たこともなかった

私に、向けられたこともなかった

怖い表情……。






「長沢は、保健室に行ったぞ」



そう言いながら一歩、一歩と近づいてくる。


それに合わせて

私の心臓も、速くなる。






私は、先生を避けるように教室を出ようとした。


「……どこ行く?」


「謝ればいいんでしょ……?」


私は、可愛くない……。


『私はやってない!』と言えない。

だけど、先生に誤解されたまま、面と向かって嫌われたくない。





この複雑な気持ち

どうすればいい……?



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