届け、この想い~先生と私とチューリップ~
紙が置いてあるのは、ちょうど先生方が居る、テントの前。


「藤田、どうした?」


担任が立ち止まった私に声を掛けた。


黙って紙を見せると、突風が吹き、腕を引っ張られた。



「う、うわっ……せん……せっ」


掴まれた腕から、引っ張る本人を見上げると、サラサラの髪を靡かせながら、先生がにっと笑う。


「ダッシュで1周はきついな、頑張るぞ!!」


佐伯先生は、私の手を握りながら、全速力で走った……。



先生とは、足の長さが違う。



それに、男と女。



ほぼ、引っ張られているだけの状態で、一位を独走していた生徒を抜かして見事、ゴール!!





「1位おめでとう……。大丈夫だったか?足、痛めてない?」


心臓がドキドキ鳴って、呼吸も苦しい。


走ったからではないことは、分かってる。


でも今は、走ったせいにさせてください。


「せんせ……ありがとうございました」



私が頭を下げると、先生は笑った。



「お礼より、俺は藤田さんが心配なんだけどな」


そんな優しい先生も大好き。


晴れた秋空の下で

大好きなPUMAのジャージを着た

大好きな先生と走れた



それだけで、幸せです。





「大丈夫です……。私、足遅くて、ただ先生に引っ張られてる状態で、すみません」



呼吸を整えながら言うと、先生の大きな手が、私の頭に乗った。


「そんな事ないよ。手を繋いで走ってて、気持ち良かった」



じゃあ、続きも頑張れよ。と言いながら先生は、定位置に戻った。




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