届け、この想い~先生と私とチューリップ~
2月14日は、不思議な日。

女子も、鞄に忍ばせたチョコでソワソワ。

男子も、貰えるかソワソワ。

男の先生たちも、どこかソワソワ。




「数学の問題集出せよー」

先生は、今日も、だるそうに授業が終わると、全員分の問題集を抱えて出て行く。




問題集の端っこに、こっそり、書いたんだ……。




『今日、放課後行きます』って……。



先生、気付いたよね。



貰ってくれるかな。





帰りのHRで、数学係が問題集を返す。


ドキドキしながら、机の下でパラパラと、ページをめくる。




『おいで』






先生の低い、少し掠れた声が耳元で聞こえた気がして、ドキンと胸が高鳴った。


沙織と別れ、それぞれチョコを渡しに行く。


数学教科室を6回ノック。


“バカが来たよ”


“さえき つよし”



もう、どっちでもいいや……。


合言葉は違っても、6回のノックは私と先生の、秘密の鍵。



「はーい」


中から、先生の声が聞こえる。




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