届け、この想い~先生と私とチューリップ~
担任は、クスッと笑い、私の隣に立った。


「大丈夫」


なにが大丈夫なんだろう。


なにを知ってて大丈夫なんだろう。


だけど、担任の先生の言葉は暖かかった。


「……先生は、もう帰るの?」


「今日はバレンタインだからさ!!妻と、ラブラブデートなんでね」


ハハハンと笑う担任に、頬を膨らませた。


「先生のばーか!!」


「ハハハ、今は何とでも言え!!」



幸せそうな顔しちゃって……。


担任は4月に結婚したばかり。


可愛い奥さんの写真を、職員室の机に飾ってるんだ。


その隣に、もう1つ何も入ってない写真立て。


『子供と3人で!!!』


なーんて笑ってたっけ……。





担任の笑顔を見ていたら、私の口元も緩む



「はいはい。ラブラブしてきてくださいね。インテリ眼鏡せんせ!!!」


「俺に惚れんなよ!!」


「ばーか!!」


「また明日な」


走り出した私を、担任は笑顔で大きく手を振ってくれた。




「藤田!!」


担任に呼ばれ、校門で立ち止まった。


「泣け、いっぱい泣け!!そして、いっぱい綺麗になれ!!」



嬉しかった……。



担任と、こんなに2人で話したのは初めてだった。


「綺麗になりすぎて、びっくりさせてやるからー!!」

私は笑いながら、担任に手を振り返し走って帰った。


先生と、手を繋いで帰った道を……。

1人の帰り道

あの時は、楽しかったのに

嬉しかったのに

今は、こんなに切ない

寂しい。









吐く息が冷たく、白い……。



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