届け、この想い~先生と私とチューリップ~
「うっ……ありがと……」


初めて下の名前で呼んでくれた。


もう、いいよ……先生。


お腹いっぱいだよ。


「杏ちゃんは、白いチューリップの花言葉、知ってる?」


「……いいえ」


「赤いチューリップは『博愛』誰にでも優しく、平等に愛せる杏ちゃんは、チューリップそのもの。だけど、白いチューリップは『長く待ちました』だよ。長くて寒い冬を終え、暖かい春に待ち焦がれる……。春が好きな杏ちゃんは、白いチューリップだな。ま……今では春を待たずとも、1年中、花屋さんにあるけどな……」



先生の柔らかい微笑を見て、私は、声をあげて泣いた。


「ありがと……ありがと」


何度も言葉に詰まりながら、ありがとうを繰り返した。






先生は、どこまで優しいの?


バカが付くくらい、いい人すぎるよ。


「他の子には、マグカップ内緒な」


先生は自分の口に人差し指を当てた。


「私だけ、なの?」


「当たり前だろ!!言い方悪いけど、みんなにいちいち選んでられるか!!」


「……ありがとっ!!」



泣きじゃくって、グチャグチャな顔で、飛び切りの笑顔を見せた。



「中の包みが他の子と同じだから」



紙袋を覗くと、可愛くラッピングされたクッキー……。


小さなヒヨコのクッキーたち。


チューリップにヒヨコ。


先生、やっぱり可愛い!!



「チューリップにヒヨコなんて子供みたい」


私が笑うと、先生は照れたように分厚いテキストで私の頭を軽く叩いた。


「先生は、いいパパになれるね!!」


「……は!?」



目を見開く先生に、またね、と手を振り教科室を出た……。



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