届け、この想い~先生と私とチューリップ~
先生は「だから、チューリップは奥深いんだぞ!」なんて笑っていた……。


「あとは、北海道が好きだな……。先生は、北海道で生まれました。北海道は、雪とかしか思い浮かばないだろうけど……いつか、旅行で来いよ!」






今まで見てきたのに

先生の知らなかったことが

たくさん出てくる……。


ぼーっと先生を見つめていて目が合うと、先生は優しく微笑んだ。


先生が笑った時

右の八重歯が見えた。


私の好きな笑顔……。

ずっと見ていたかった……。



「スノードロップって知ってるか?」



先生の質問にチラホラと「知ってる」と返事が聞こえる。


「雪のしずくという名前にふさわしい純白の花だよ。『待雪草マツユキソウ』なんて別名もある……。この花は、いろいろな伝説があるんだ」




「エデンの園を追われて、冬の寒さに嘆き悲しむアダムとイヴ。2人を慰めた天使が触れた雪がこの花になった……。」


「それから、もう1つ。かつて色を持たなかった雪に自分の色の白を分けてあげたのがこの花。この花の周りに雪が積もらないのは、雪がこの花に対する、恩を忘れてないから……」



な、素敵だろ?

と、先生は教室を見渡した。




「花のように爽やかで明るくて、見ていて癒されるみんなが大好きだった。だから、いろんな思い出がありすぎて楽しかった、しか言えないけど……本当に、ありがとう」


最後に先生は、そう言った。

クラスみんなで寄せ書きをした色紙と花束と、文化祭でのスライドをDVD-Rに焼いたもの……などなど。

両手に持ちきれないほど、先生に渡した



「このクラスは太っ腹だなぁ!本当にありがとう!3年生になっても、負けるなよ。頑張れ!!」


先生が教室を出て行っても誰も、口を開かなかった。


誰も席を立たなかった……。


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