届け、この想い~先生と私とチューリップ~
先生が手を差し出した場所で

もう1度自分の右手のひらを見て

ふっと笑いがこみ上げる。





その手に雨が1粒……。





それを、きゅっと拳を握って、ゆっくり目を閉じた。


先生の手

暖かかった……。



許されるなら

夢ならば

もう1度

暖めてよ……。



私の手は、冷え切ってるよ……。


どうして、先生だったんだろう。

どうして、生徒だったんだろう。



そんなことは、もう、どうでもいい……。




先生……

目を閉じていると

先生の笑顔が

暖かい手が

すぐそこにある……。





こんな、なんでもない通学路を先生は、一瞬で思い出の場所にしちゃうんだもんね……。


ずるいよ……。


私は、ここを通るたび、先生を思い出すんだよ……?

ほとんど毎日通るんだよ?


先生の手を思い出して

きっと涙を浮かべるんだ。


これから遠い場所に行く先生、私を、忘れないでね。

私を教えてたこと、忘れないでね。


先生の生徒で居られれば

それだけで、幸せです






さっきまでの冷たい雨が

少しずつ、雪に変わる……。





私たちの街を

真っ白の雪景色に変える。





先生……?

真っ白の雪の花が、いっぱい降ってきたよ……。



私は、マフラーで口まで隠し

もう少し、泣いていよう……。





この、思い出の場所で。




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