届け、この想い~先生と私とチューリップ~
同封されていた写真には、タキシード姿の先生とドレス姿の奥さん。


すごく、すごく幸せそうな笑顔。


ねぇ、先生?


先生は、ジャージとスーツと同じように、タキシードも似合うんだね……。



私、知らなかったよ……



でも、ちょっと、タキシード姿の先生を生で見たかったかもな……。


本当は、その姿で

私の隣に居てほしかった。





私の、言えなかった

夢のまた夢。







胸に暖かいものが流れた。


「おめでとう……」



今だから、言える。



私の気持ちを知っても、真剣に向き合ってくれた先生だから言える……。



心から、おめでとう、と……。




封筒の右下には

チューリップのスタンプが押してあった。





先生は、どんな風にプロポーズしたのかな……。


優しくて、少しキザな先生だから、大切な彼女のために素敵なプロポーズをしたのかな……。


いつしか手紙の回数も減り、そして、出した手紙はポストに戻って来た。



戻ってきた手紙を、先生との思い出箱にそっと入れた。


私は、我儘だから、先生が『先生』って呼ばれるの、嫌なんだ。


私の知らない所で

私の知らない子に

『先生』って呼ばれるのが、嫌なんだ……。


先生が、先生で居るのは、私が1番、応援してたのに……。


いつからか、私の先生だよって

大声で言いたいくらいに

欲張りになっちゃった……。





先生……。

笑ってよ……。


「何言ってんだよ~」って

笑ってよ……。



前みたいに、私の頭を分厚い問題集で叩いてよ……。




じゃないと



涙止まらないよ……。




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