似非王子と欠陥令嬢
「返して来なさい。」

「嫌です。」

腕組をしてキャロルを見下ろすリアムとプイッとそっぽ見ながら正座するキャロル。

リアムの予想通り袋の中身はホーンラビットであった。

そこはまあ良い。

ただ嫌な予想通りホーンラビットは離宮からキャロルが捕まえて来た物であった。

ただの泥棒である。

件のホーンラビットは今レオンに捕まえられてバスルームで洗われている所である。

「飼い主が探してたら困るだろ?
早く返して謝って来なさい。」

「沢山そこら中で共喰いしてましたし、メイドも世話を放棄してるみたいでしたし、あの子も共喰いしようとしてた所を捕まえたので1匹位いなくなっても誰も探してませんよ。」

「それは確かにそうだが…。」

離宮内ではルシウスの為に魔獣を飼い始めたものの令嬢達はすぐに飽きてメイドに世話を押し付けたらしい。

しかも令嬢達はホーンラビットを大量に買った為押し付けられたメイドも離宮内で縄張り争いをどうにも出来ず諦めてしまい、今はウサギバトルロワイヤルが絶賛開催中だとの報告も上がっている。

確かに1匹いなくなっても誰も気が付かないであろう。

「それに観察したいだけなんで観察が終わったらポイッと離宮に投げて返しますから大丈夫です。」

「拾ってきたなら責任を持って最後まで面倒を見なさい。」

「…我儘ですね。
分かりましたよ、ちゃんと飼います。」

リアム自身最後の1匹になるまで離宮で放置される事を考えるとここで飼った方が良い気がしてきたのだ。

すくなくともここならバトルロワイヤルにはならない。

ちゃんと世話をするのかがかなりの不安材料だが。

まあ今はレオンが居座ってるし何とかなるだろう。

レオンは中々面倒見が良い。

「ほら綺麗になったなあブラッディ・ファングー。」

ネーミングセンスに問題はあるが。

真っ白な綺麗な毛並みになったブラッディ・ファング(仮)は体の水気をブルブル飛ばす。

「…なんですかその呼び方。」

「えっこいつの名前!
かっこいいだろ?」

「それの名前もう決まってますよ。」

キャロルはブラッディ・ファング(仮)に向かって呼びかける。

「おいで毛玉。」

「なんちゅー名前付けてんだキャロル!」

レオンが喚いているがホーンラビットは鼻をピスピスさせながらキャロルの膝に座る。

「…毛玉が気に入ったみたいだな。」

「なんでだよ?!」

レオンの抵抗も虚しく毛玉は塔の新しい住人となったのであった。
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