似非王子と欠陥令嬢
神が世界を、人間を作ったと言われているこの国でこの魔道具がもし完成したとて受け入れて貰えるのかも分からない。

神への冒涜と言われて教会から破門されてもおかしくない。

それでもキャロルは書物に埋もれながら新しい魔法陣を書いた。

これが完成したならば確実に寮に住む人々は楽になるはずなのだ。

キャロルはまた『ブンブン丸7号』に羊皮紙を乗せる。

「ーっ!
ダメだ!
今度は南部の方言を認識しなくなった!」

「…分かりました。」

キャロルはまたペンを握り締める。

ペンだこが破れ血が滲みだした為手には包帯を巻いている。

正直に言えばもうまともに頭が働かない。

睡眠を妨害する為の指輪を使い始めて既に3週間目である。

後残るのは意地しかない。

推薦され、開発部からの開発支援も過剰なまでに受け、何よりリアムとレオンが完成すると信じてずっと手伝っているのだ。

ここでキャロルが音を上げる訳にはいかないのだ。

キャロルはまた書き損じた羊皮紙を部屋の隅に投げ捨てる。

出品時には開発した証拠として研究、開発までに書いた書類の全ての提出が決まっているのだ。

5日前の時点で図書館から借りてきた本の全てのページを足した数を越えたと聞いている。

あれから何枚増えたのだろう。

後何枚書けば終わるのだろう。

そもそも自分は本当にこれを終わらせられるのか。

キャロルは爪をガリっと噛む。

時計の針が走り去るかの如く進むのが早い。

気が付けばもう残り24時間をとうに切っている。

これはもう本当に無理かもしれない。

目を覚ますために何度も太ももにペンを突き刺すが痛みを全く感じられないのだ。

キャロルは無意識のうちにペンを握る力が緩んだ。

「諦めんなキャロル!」

レオンの怒号が部屋に響く。

「お前実力だけはずば抜けてんだろ?!
国一番なんだろ?!
なら諦めんなよ!
このむちゃくちゃな魔道具完成させろよ!!」

…そうだ。

レオンだってこの1週間徹夜で手伝ってくれているのだ。

「キャロルが二次選考行こうがダメだろうがこれが完成すれば俺の1番は絶対お前なんだ!
胸張ってお前がこの国で絶対1番すげえって言って回れんだ!
だから諦めんな!
まじで諦めんな…っ!」

レオンだってギリギリなのだろう。

涙声になっている。
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