似非王子と欠陥令嬢
「そもそもこれに関しても私はやり返しただけだよ?」

「何に対してですか。」

「お渡りがふりだってバラした挙句レオンと婚姻予定なんてわけの分からない話にされたからね。
それの仕返しだよ。」

まだそれを怒っていたのか。

こいつ女々しすぎやしないだろうか。

「だからっていくら何でもこれは酷いと思いますが。
王家所有の宝石まで使って嫌がらせするってどうなんですか?」

「あぁ、気が付いたんだ。
大方誤魔化そうとしてアグネス嬢にでも言われたかい?」

くすくすとルシウスが笑う。

当たっているのがまた腹が立つ。

曲の終わりに合わせて最後に体重をかけて足を踏みつけた。

ルシウスが一瞬眉間に皺を寄せる。

キャロルは少しだけ溜飲を下げ、すたこらと壁際に逃げ戻った。

苦笑いしているルシウスを一瞬睨み付け振り返るとキャロルを待ち構えているアグネス嬢とフワリー嬢がいた。

一瞬だけ持ち直した精神がまた地を這う。

絶対に問い詰める気満々なのだろう。

諦めの境地で2人に近付く。

「えっとアグネス様、フワリー様…。」

「災難でしたわねキャロル様!」

「…は?」

何故か涙目のフワリー嬢に慰められる。

一体何があったというのか。

2人の後ろにいたクリスに視線を送ると目配せをされた。

話を合わせろと言う事だろうか。

「先程レオン様がクリス様に謝りにいらっしゃいまして事情をお聞きしましたの。」

「はぁ…そうですか。」

何故レオンがクリスに謝る展開になっているのだろうか。

「でもレオン様のミスを庇うなんて殿下ってやっぱりお優しいですわ。」

アグネス嬢もうっとりと頬を染めている。

嫌がらせした犯人が優しいとは勘違い甚だしい。

盛り上がっている2人に着いて行けずキャロルがポカンとしているとクリスが耳打ちする。

「レオン殿が協力してくれてね。
レオン殿が婚約者候補のドレスなのに間違えて婚約者としてのドレスを仕立ててしまったって話にしてくれたんだよ。
殿下がそれを知ってキャロルとレオン殿の為にピアスの色をわざわざ合わせてくれたって話になってる。」

ルシウスが良い奴扱いされるのは納得いかないがこれがベストだろう。

クリスを悪者扱いしなくて良いのも喜ばしい。

後でレオンには何かお礼をしてやろう。
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