似非王子と欠陥令嬢
料理に目を落としていたルシウスは顔を上げて微笑む。

「そうですか。
占って頂きありがとうございます。」

占い師の言葉を何でもない事の様に無視するルシウスに占い師は唖然としている。

何か言いたげに去ろうとしない占い師に焦れたのかルシウスはシャンパングラスを持ち上げ中身を揺らした。

「では私からもお礼に1つ予言を。
この後停船する港を2つ以上超えると貴女は亡くなります。」

「…は?」

「失礼。
貴女は人の未来は見えると仰る癖にご自分の未来は見えていないようでしたので。」

ルシウスは目を全く笑わせずに口角だけを上げて占い師の少女を見る。

「3つ目の港からは国境を越えます。
あちらの国ではアルビノは大層人気だそうですよ。
何でも万病に効くとかで肉は高く売れるらしいです。
…未来が見える等とほざくのは構いませんが稼ぐ場所は考えた方がよろしいかと。」

ルシウスの嘲りを隠そうともしないその言葉に少女は顔を真っ赤に染める。

「…御忠告痛み入ります。
ですが私の占いは当たります。
貴方様も御自身でお命を絶たれたりなさいませんようお気を付け下さいませ。」

頭を勢い良く下げて彼女は肩を怒らせながら去ってしまった。

ルシウスは片手を上げて見送るとまたシャンパンを煽る。

ルシウスが見知らぬ相手に喧嘩を売るとは珍しい。

余程苛立ったのだろうか。

レオンも気まずげにルシウスをチラチラ見ている。

「…殿下、そのさ気にすんなよ。
な?」

「ん?
あぁ全く気にしてないよ。
私が占いって物が心底嫌いなだけだから。
彼女には悪い事しちゃったね。」

「占いが嫌いなだけってお前…。」

「人間誰しも受け入れ難いとか生理的嫌悪感を抱くものってあるだろう?
私の場合それが占いってだけだよ。」

占いに親でも殺されたかのような憎み具合だ。

一体占いで何があったのだろう。

聞いてもはぐらかしそうなので聞かないが。

「そう言えばさっきの話本当なんですか?
隣国ではアルビノがって話。」

「それは本当だよ。
最近美味い仕事があるって言ってアルビノを捕まえて隣国で売るって言うのが問題になってるからね。
彼女もその口だよ。
彼女の仲間やアシスタントに売人がいるんだろうね。」

何とも恐ろしい話である。

だから仲間達に聞こえない様ルシウスは声を落としたのか。
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