似非王子と欠陥令嬢
ルシウスにそう褒められるがこいつの場合何か納得がいかない。

こいつが先程使ったフレイムウェイヴだって上級魔術なのだ。

それを剣を振りながら片手で発動させやがった。

それが如何に非常識な事かこいつは分かっているのだろうか。

魔術の時に集中するのは具体的なイメージが必要になるからだ。

人によっては具体的なイメージを詠唱として長々呟いて発動する事だってある。

上級魔術ともなると暴発したりしよう物なら大爆発を起こす事もありうる。

まかり間違っても敵を倒しながら発動する様な代物ではない。

だから魔術師は集中する為に後衛と決まっているのだ。

それを軽々やっておきながら圧巻も何もあった物ではない。

神様はこいつの攻撃力を上げすぎではなかろうか。

キャロルがブツブツ呟いている間に火柱は消えそこかしこにアンデッドから落ちた魔石が散らばっていた。

それを皮袋に拾い集めていくがこれがなかなかしんどい。

「あっこの魔石と王冠はリッチアンデッドの物だね。


「いたの気が付きませんでしたね。」

これではリッチアンデッドも報われまい。

存在さえ認識される前に死んでしまうとは。

死んでからも酷い目に合うなんてこの世は本当に無情である。

魔石を集め切ると同時に通路の端に着き目の前に巨大な扉が表れた。

扉の向こうに魔物がいるとキャロルの水晶が示している。

「…ようやくダンジョンらしい事してくれるみたいだね。」

ルシウスが扉を見詰めながら微笑む。

「ダンジョンって言うのは本来各階毎にダンジョンボスと呼ばれる魔物がいる物なんだよ。
良かったねキャロル。
このダンジョンはまだ死んでない。
そしてその総ボスである龍もまだ死んでないって事だ。」

「…扉の向こうには何がいるんだ?」

レオンが緊張を隠しきれない顔で聞く。

リアムがその肩をポンと叩いた。

「さあな。
何がいるのか調べて攻略し次に情報を渡すのが冒険者だ。
情報がない今、俺達が最初の攻略者なんだぞ。
冒険者にとっては夢の話だ。」

「そうだよレオン。
何階まであるのか、何が出てくるのか全く分かっていないダンジョンなんてそうそうある事じゃないんだ。
…楽しんでやろうじゃない。」

ルシウスはそう笑うと扉に手をかけ力を込めた。

錆び付いた重苦しい音を立て扉が開いていく。
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