似非王子と欠陥令嬢
新人は噂になるものです
「ねえキャロル様知ってます?」

夏の暑さもピークを過ぎたある日。

夏季休暇も終わり領地に戻っていた貴族達も帰って来た。

本日のキャロルとレオンは離宮の庭園でフワリー嬢とお茶会の真っ最中である。

アグネス嬢は14歳の為朝から夕方までは学園に通っているので本日は不在であった。

「何をです?」

フワリー嬢の土産である領地で生産したという紅茶を飲みながらキャロルは答える。

紅茶の事はよく分からないが美味しいんじゃないだろうか。

良いお値段がするらしいし。

違いはさっぱり理解出来ないが。

フワリー嬢はキャロルが失礼な事を考えているとも知らず声を潜めてヒソヒソと話す。

「王都の教会で神託が下りたらしいですわ。」

「しんたく?」

脳内でしんたくを一生懸命変換するが上手くいかない。

それほどまでに日常で使わない単語だ。

「なんでも純白の巫女様がいらっしゃったらしくて、巫女様が『近く異世界より聖女様が降臨なさられる』と神託を告げられたらしいですわ。」

「へー聖女様ですか。」

キャロルは頭の中の辞書を捲る。

聖女とは確かこの世界にはない知識を持ち、光魔術と呼ばれる治癒に優れた魔術を使える唯一の人物だったはずだ。

魔力量も王家と同等量を持っており歴代の聖女は皆その魔力量を継がせる為王太子と婚姻している。

「でも聖女様ってお伽噺みたいな存在ですよね?
本当に降臨なんてするんですか?」

「それがもう既に教会が保護したそうなんですの!
異世界からいらっしゃってるからもちろん混乱しておられるでしょう?
落ち着いたら大々的に発表されるらしいですわよ!」

お伽噺かと思ったら実際に存在していたらしい。

機会があれば光魔術とやらを見せて欲しい物だ。

「へーそうなんですかぁ。
あれ?
じゃあ殿下の婚約者って聖女様で決まるんですか?」

そうなったらフワリー嬢あたりは大暴れしそうな物だがやけに落ち着いている。

「それがですね。
キャロル様、貴女の存在で今回は王太子ではなく第二王子との婚約に決まりそうらしいんですの。」

「へ?
私ですか?」

フワリー嬢が大きく頷く。

「聖女様の光魔術はお子には代々継がれず聖女様のみ1代限りの物というのは有名な話でございましょう?
ですから王太子と聖女様が婚姻を結ぶ理由は魔力量だと言う事は分かりますわよね?」
< 158 / 305 >

この作品をシェア

pagetop