似非王子と欠陥令嬢
結局答えは出ず、今日に限って来客があるとかでレオンも来ない。

何だか仕組まれた様な気がしながら迎えに来た神官の後ろをとぼとぼ歩く。

敵対勢力の教師としていくなどルシウス派閥からしたら裏切り行為に間違いないだろう。

フワリー嬢の「なにを考えているんですの!?」という声やアグネス嬢の底冷えのする様な笑顔が頭をチラつく。

しかししがない一貴族であるキャロルに王妃様の命令を無視出来ようか。

いや出来まい。

こうなったら相性が悪いからと聖女様に断って貰うしかないのだ。

そんな事を考えていたキャロルに何だか見覚えのある人物が目に入る。

真っ白な髪に同色の瞳の透けるような肌の少女。

かなり個性的なその容姿を自分は一体いつ見たのかと首を傾げた。

「あぁ!」

真っ白な少女が先に気が付いたのかキャロルを指差して叫ぶ。

「貴女船にいた王子の従者じゃない!」

「…は?」

キャロルは船と聞いて必死で頭を働かせる。

「あ…あの隣国に売り飛ばされかかってた占い師さんでしたか。」

キャロルはやっと思い出せてうんうんと頷く。

スッキリである。

「…ちょっと待って。
あんたがここにいるって事は…。」

占い師の少女はキャロルの腕を掴み耳に口を寄せる。

「…あんたと一緒にいた王子って王太子様だったりする?」

「はい、そうですね。」

「…そしてあんたが王太子が唯一お渡りをしたって言うキャロル・ワインスト?」

「…はぁ、まあ。」

キャロルの返事に少女は一気に青ざめる。

これだけ肌が真っ白でもまだ白くなれるのかとキャロルは関係ない事を考えていた。

「…というか、貴女が聖女様なんですか?」

「なっ違うわよ!
私は未来予知して神託をした巫女!
純白の巫女の噂とか聞いてないわけ?」

そう言えばフワリー嬢がそんな事を言っていた。

船で荒稼ぎしようとして売り飛ばされかかっていた少女が巫女だとは笑える話だが。

「…不味いわ。
非常に不味い。」

目の前の少女は頭を抱えてブツブツと呟いている。

「…どうしました?」

「…いいキャロル様?
決して第二王子の陣営に入らない様に逃げなさい。
そして何としてでも貴女が教師になる事を断らせるの。」

少女は真剣な顔でキャロルの肩を掴む。

目が少々怖い。

「はっはあ。
頑張ります…。」

「お願いよ。
…私は絶対あんな未来見たくないの。」
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