似非王子と欠陥令嬢
「あっあなたがキャロルさん?!」

占い師の少女に肩を掴まれたまま呼びかけられた方を見る。

やけにフランクな呼び方だ。

キャロルは首を回してその声の方を見て目を見開いた。

卵型の輪郭や艶やかな真っ直ぐな黒髪に黒い垂れた瞳、ぽってりとしたピンク色の唇。

そこまでは良い。

可愛らしい顔だなあという位の物だ。

だが膝上のスカートと呼ぶべきか腰布と呼ぶべきか分からない布に、二の腕まで切られたシャツ。

この格好は異世界では当たり前なのだろうか。

こちらでは露出狂と呼ばれるレベルだが。

誰も教えていないのだろうか。

キャロルは何と言うべきか分からず占い師の少女に目を合わせる。

少女もキャロルが何が言いたいのか分かったのか小さく首を横に振った。

気にするなとでも言いたいのだろうか。

それとも触れるなという事なのか言っても無駄だという意味なのかさっぱり分からない。

混乱しているキャロルを気にする事なく露出狂の少女はニカッと笑う。

「あたし西野彩花です!
タメらしいしよろしくお願いします!」

「ため…?
よっよろしくお願いします。」

片手を差し出され握るとブンブン振ってくる。

なかなか激しい少女だ。

何を言っているのかよく分からないが。

タメとは一体どういう意味なのか。

「あたしの事は彩花で良いですからね!」

「…はあ彩花様ですか。」

「うわっキャロルさんも固いんですね!」

返事が気に食わなかったのか彩花と名乗った少女は頬を膨らませる。

「まっいっか。
あたしすっごくキャロルさんに聞きたい事があったんです!」

「なんでしょう?」

彩花嬢はキャロルの耳に口をよせ囁く。

「キャロルさんってやっぱり転生した悪役令嬢なんですか?」

「…………………………。」

まずい聞かれた問が何一つ意味が分からない。

キャロルの無言が違う意味に取られたのか彩花嬢の目が光った。

「……やっぱり!
ここはやっぱりテンプレだよね!
乙女ゲーの世界だったんだ!」

「………………は?」

「あっいいのいいの今更知らないフリとか遅いから。

やっぱりそうだったんだ!
聖女といえばやっぱり冒険か乙女ゲーのヒロインがセオリーだよね!」

ポカンとしたキャロルを置いてけぼりにして彩花嬢は1人盛りあがっている。
< 162 / 305 >

この作品をシェア

pagetop