似非王子と欠陥令嬢
「おかしいなって思ったんだよね!
聖女と言えば世界を救う旅に出るはずなのに魔王とかいないって言われちゃうし!
でも戦争の道具にされちゃうから旅に出たいなら護衛は付けてねって何か軽いし?
そもそも召喚とかじゃなくて迷子の保護扱いに近いとか言われちゃうし?」

1人ブツブツ言っている彩花嬢を横目に見ながらキャロルは用意されたテーブルに着きハーブティーを飲む。

独り言の内容もさっぱり意味が分からないが、分からなさ過ぎて興味が湧いてきている。

座ってじっくり聞かせて頂くしかない。

「ならこれは冒険ファンタジーじゃなくて乙女ゲームに来ちゃったパターンかと思ったけどこんなゲーム知らないし第二王子には婚約者とかいないって言うし?
ライバルの悪役令嬢どこいったって感じじゃん。
そもそも聖女と結婚するのは王太子様だって話なのにそこから変わってるし。
で、あたし気付いたの!」

彩花嬢はビシッとキャロルを指差す。

突然の指名にちょっとだけびっくりしてしまう。

紅茶を零す所であった。

「こういうのは大体ゲーム知識のある悪役令嬢がバッドエンド回避の為に先回りして婚約者としての仲を深めている物なの!
後は婚約破棄後の為に日本での知識を使って色々開発したり領地経営しているはず!
先回りされてしまったからあたしは王太子様と婚約出来ないんでしょ?
という事は現在先回りして開発等に携わりその上で王太子様の婚約者に収まっている人物こそ悪役令嬢なの!
そう!
キャロルさん、これがあなたこそ悪役令嬢だという証拠です!」

「……………………。」

「ふふ。
図星過ぎて声も出ませんか。」

凄い。

この子の言っている事が何一つ、本当に何一つ分からなかった。

何から聞いたらいいのか分からない位理解出来なかった。

キャロルの表情筋がもう少し発達していれば大爆笑していただろう。

理解出来なさすぎて最早お笑いの域である。

「…えっと彩花様。」

「なに?
反論でもあるんですか?」

「いえ…反論とかではないんですが…私を悪役だと思ってるって事で良いんですよね?」

「絶対そうだもん。
しらばっくれても騙されないんだから。」

「なるほどなるほど。
…では何故悪役でライバルの私に教師役を頼んだんです?
関わらない方が良いのでは?」

キャロルが素朴な疑問をぶつけると彩花嬢は胸を張った。
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