似非王子と欠陥令嬢
「だってどんな物語でもヒロインは悪役を倒して王子様と結ばれる物じゃない!
しかもハリー君は頼んでも全然王太子様って人に合わせてくれないし。
噂で聞く限りどちゃくそイケメンなんでしょ?
こうなったら先にキャロルさんに会わなきゃ王太子様には会えないんじゃないかって気がついたんだ!
イベントこなさなきゃ会えない隠しキャラみたいな?」

やばい。

心底やばい。

ここまで分からない事は人生で初めてだ。

質問に対する回答の一文一文全てに質問したくなる事などそうそうないだろう。

まず第二王子様をハリー君と呼ぶのが素晴らしい。

個人的には嫌いなタイプではない。

観察対象としてだが。

「はーなるほどなるほど。
よく分かりました、はい。」

全く分からないが拍手をしておく。

ここまで理解できない熱弁を奮ってくれた事への感謝の気持ちである。

「えーっとつまり彩花様はハリー第二王子ではなくルシウス王太子様と婚約したいと言う事でよろしいですか?」

「へールシウス君って言うんだ!
イケメンで次の王様なんでしょ?
せっかく聖女になったんだからそこ狙わなきゃじゃん!」

キャロルはティーカップをカチャリと置いた。

彼女は非常に愉快な子だ。

それは認める。

だがキャロルには彼女に嫌われて教師役を断って貰わなければならない理由があるのだ。

あとはこのお花畑の脳みそが少々心配になったというのもある。

「んー大変失礼ですが私はハリー第二王子様にしておくべきだと思いますよ?」

「は?
なんでよ?
自分がバッドエンドに行きたくないから?」

キャロルは今程自分の表情筋の無さに感謝した事はない。

表情筋が死んでいなければ確実に今頃噴いてしまっていた。

「いえいえ。
まず第1に時間が足りないからです。」

「時間?」

「えぇ。
彩花様は異世界に来たばかりですよね。
ルシウス王太子様の婚約者が確定するまで後1年半を切ってます。
申し上げ辛いのですが王太子妃としての教育が到底間に合わないと思うんですよね。
その点…あれ?
ハリー第二王子様っておいくつでしたっけ?」

「今11歳よ。」

「なるほど。
ならば15歳まで後4年は猶予がありますよね?
なるべく猶予がある方が良いんじゃないかと。」

「でもあたしだって学校行ってたしちゃんと教育受けてたもん。」
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