似非王子と欠陥令嬢
「…で私の所に朝から弟が怒鳴り込んでくる事態になったってわけだ?」

ルシウスがキャロルのソファーにやたら長い足を組んで腰掛けている

「…多分。」

「多分というか確実だよね?
聖女とやらがキャロルに嫌味や酷い事を沢山言われただの、王妃にも悪口を書いた手紙を送られただの…。
挙句の果てに婚約者候補の教育がなってないだの、婚約者候補を使って聖女に嫌がらせするなだの…。」

ルシウスはそこで言葉を切り俯いた。

肩が震えている。

「ははっ。
本当笑えたよ。
我が弟ながらさっぱり意味が分からなかった。」

怒っていたわけではないらしい。

笑いのツボが謎な男である。

「しかもそれだけブチ切れておきながら聖女が『嫌われちゃったけど、でもキャロルさんに認めて貰えるように頑張りたいの!』って言ったから仕方ないけどキャロルを教師役にしてやってもいいとか。
ほんと馬鹿なのかな?
聞きながら笑った笑った。」

「えっやっぱり私が教師役なんですか?」

あれだけ嫌われる事を言ったはずなのに足りなかったらしい。

メンタルの強い聖女様だ。

「義母上がそれをご希望だからね。
例え聖女様が嫌がったとしても教師役は逃げられなかったと思うよ。」

「…というかなんで王妃様は私を指名したんですかね。」

キャロルがげんなりしながら言うとルシウスがキャロルの頭を撫でる。

「ごめんね。
多分私のせいなんだ。」

「いや、それはなんとなく分かってるんですが。
理由が分からなくて。」

「キャロルが私の切り札だからだよ。」

ルシウスが困った様に笑う。

「聖女が弟と婚約するでしょう?
キャロルは婚約者候補の中で唯一聖女と対抗出来る魔力量の持ち主だからね。
キャロルが向こうの陣営に付けば私は王位争いでかなり不利になるんだ。
義母上はそれを狙ってるんだよ。」

「あーなるほど。
だから私を教師役にして陣営に入れようとしてるんですね。」

なかなか強かなお母様である。

いや王妃ともなるとそれ位強くなければいけないのかもしれないが。

だがそれを義理とは言え息子に向けるのはどうなんだろうか。

「まあ義母上もキャロルの手紙の内容には納得しているみたいだし、教師役はまだ先になると思うよ。
もしかしたら学園の入学時期になってその話もなくなるかもしれないしね。」

「…あの聖女様がそう上手く納得してくれますかね。」
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